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今さら聞けない血圧の話|高めが続くと脳に何が起きるの?

高血圧

「自覚症状がない」からこそ、怖い
健診で「血圧が少し高めですね」と言われたことはありませんか。
でも、頭痛もない。めまいもない。体はいたって普通。
だから「まあ、大丈夫かな」と思って帰ってくる。

高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれるのは、まさにそこです。
症状がないまま、血管へのダメージが静かに、じわじわと積み重なっていく。

この記事では、高血圧が脳にどんな影響をもたらすのか。
脳血管疾患と認知症、それぞれとの関係を、データをもとにわかりやすくお伝えします。

高血圧は血管を傷める

高血圧の状態が続くと、血管の壁に常に強い圧力がかかり続けます。

水道のホースを想像してみてください。水圧が高い状態が続くと、ホースの内側が少しずつ傷んでいきますよね。血管も同じです。
傷ついた血管の内壁にはコレステロールなどが溜まりやすくなり、血管が硬く・狭くなっていきます。

これが動脈硬化です。

動脈硬化が進むと、血液の流れが悪くなったり、血管が詰まったり、逆に破れやすくなったりします。その影響が最も深刻に出やすいのが、細い血管が密集している脳です。

高血圧と脳血管疾患

脳血管疾患とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで起こる病気の総称です。
代表的なものに、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血があります。
⚫︎脳梗塞
脳の血管が詰まり、その先の脳細胞に血液が届かなくなる状態です。高血圧による動脈硬化が主な原因のひとつで、日本の脳血管疾患の中でもっとも多いタイプです。

⚫︎脳出血
動脈硬化で弱くなった血管が、高い血圧に耐えきれず破れてしまう状態です。脳内に血液が広がり、周囲の脳組織を傷つけます。

⚫︎くも膜下出血
脳の表面にある血管(動脈瘤)が破れて出血するもの。突然の激しい頭痛が特徴で、命に関わるケースも少なくありません。

高血圧との関係
血圧が10mmHg上昇すると、脳卒中のリスクが約30%増加するとされています。
[参考:高血圧の目標値とガイドライン|丹野内科

また、正常血圧(収縮期血圧120未満・拡張期血圧80未満)の人のリスクを1とすると、高値血圧(130〜139/80〜89)で約1.7倍、Ⅰ度高血圧(140〜159/90〜99)で約3.3倍、Ⅲ度高血圧(180以上/110以上)では約8.5倍と、血圧水準が高くなるにつれてリスクが急上昇します。
[参考:高血圧の新基準とは|オムロン ヘルスケア

怖いのは、脳血管疾患は「ある日突然」起こるという点です。
前兆がほとんどない場合も多く、発症してから後悔しても取り返しがつかないことがある。
だからこそ、発症前の段階で血圧をコントロールしておくことが重要なのです。

高血圧と認知症

「認知症は年を取れば仕方ない」と思っていませんか。
実は、高血圧は認知症の重要なリスク因子のひとつです。

⚫︎血管性認知症
脳血管疾患(脳梗塞・脳出血など)によって脳の一部が傷つき、認知機能が低下するタイプです。
脳血管性認知症は男性に多く、その発症は高血圧と密接に関連し、中年期の高血圧をはじめとする生活習慣病の影響が大きいとされています。

久山町研究(2011年)によると、中年期に血圧が高かった人は、たとえ高齢期に血圧が下がっていても、脳血管性認知症の発症しやすさが正常血圧の人と比べて5.3倍高く、高齢になってから血圧が上昇した人(3.3倍)よりも発症しやすいことが示されています。
[参考:認知症は予防できる?|福島県立医科大学

つまり、「若いころの血圧の高さ」が、何十年も後の認知症リスクに影響するということです。

⚫︎アルツハイマー型認知症との関係
「アルツハイマーは血圧と関係ないのでは?」と思うかもしれません。
この点については研究によって結果が分かれていますが、注目すべきデータがあります。

ホノルル在住の日系男性を対象に平均25年間にわたって行われた「Honolulu-Asia Aging Study」では、中年期の収縮期血圧が120mmHg未満の人と比べて、120〜139mmHgの人では1.64倍、140mmHg以上の人では2.66倍、アルツハイマー型を含む認知症の発症リスクが高まることが報告されています。
[参考:高血圧と認知症の関係|森嶋クリニック

一方、久山町研究では、中年期の高血圧は認知症全体のリスクを高めるものの、病型を分けると血管性認知症との関連は明確である一方、アルツハイマー型との直接的な関連については否定的な報告もあり、研究によって結論が異なっています。
[参考:認知症の予防・高血圧|長寿科学振興財団

現時点では「高血圧=必ずアルツハイマーになる」とは言い切れませんが、中年期の血圧管理が脳の健康全体に影響することは、多くの研究が示しています。

認知症は「じわじわ進む」
脳血管疾患が「ある日突然」起こるのとは対照的に、認知症は気づかないうちにじわじわと進んでいくのが特徴です。
「なんとなく物忘れが増えた気がする」「段取りが苦手になってきた」
そういう変化に気づいたときには、すでに脳の変化がかなり進んでいることも珍しくありません。

血圧の数値とリスクの関係

日本高血圧学会の分類をもとに整理します。
[参考:高血圧治療ガイドライン2019|日本高血圧学会

分類収縮期血圧拡張期血圧
正常血圧120未満 かつ80未満
正常高値血圧120〜129 かつ80未満
高値血圧130〜139 または80〜89
高血圧(Ⅰ度)140〜159 または90〜99
高血圧(Ⅱ度)160〜179 または100〜109
高血圧(Ⅲ度)180以上 または110以上

高値血圧・正常高値血圧の段階からすでに脳心血管リスクは上昇し始めており、同ガイドラインではこの段階からの早期介入が推奨されています。
「130台だからまだ大丈夫」ではなく、「数値が上がり始めたときが、生活を見直すタイミング」です。

放置するとどうなるか、正直に伝えると

高血圧を放置すると何が起きるか、率直にまとめます。
• 動脈硬化が静かに進み、脳血管が傷んでいく
• ある日突然、脳梗塞・脳出血が起こりうる
• 発症すると、後遺症(麻痺・言語障害など)が残る可能性がある
• 脳血管疾患を経て、あるいは独立したルートで、認知症リスクが高まる
• 認知症は一度進行すると、現時点では根本的な治療法がない

怖がらせたいわけではありません。でも、これは事実です。
そして同時に、高血圧は生活習慣の改善や治療によってコントロールできる、数少ない「対処できるリスク因子」のひとつでもあります。

おわりに:知ったら、動いてほしい

この記事を読んで「ちょっと怖いな」と思った方、それで十分です。
大切なのは、その気持ちを行動につなげること。

まず、ご自身の血圧の数値を確認してみてください。
家庭血圧計があれば、朝晩1回ずつ測る習慣をつけるだけで、多くのことがわかります。

そして、130台後半以上が続いているなら、ぜひかかりつけ医に相談を。
「薬を飲まされるのでは」と心配する方もいますが、まずは生活習慣の改善から始められることも多いです。

脳の病気は、起きてから後悔しても取り返しのつかないことがあります。
でも、今日の血圧管理は、10年後の自分の脳を守ることに、確実につながっています。

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